利用者さんからの暴言や暴力にはどうやって対応すればいいの?
利用者さんからの暴言や暴力に関しては、一般的にあまり話題にはなりませんが、実は介護の現場では日常的に起こっていると言われています。
もちろん介護者の対応不足によるもの、不適切な対応によるものなどが原因となることもありますが、そうではなく適切に対応していても、暴言や暴力が起きることもあるのです。
今回は、介護の現場で悩みのタネにもなっている利用者さんの暴言や暴力に対し、私達はどうしたらよいのかを考えてみたいと思います。
介護の現場で、利用者さんから受ける暴言や暴力の現状
「介護職員が利用者を虐待した」というニュースはよく話題になりますが、その一方で「現場の介護者が受ける暴言や暴力」については、あまり知られていないのが現状です。
利用者さんの中には、体力がある人もいれば、時に力の加減ができない人もいるため「仕事なんだから仕方がない・・・」と我慢の範囲を超えている場合もあります。
もちろん暴言や暴力を受けら側の職員も、我慢ばかりではストレスになってしまいますよね。こうした介護現場の現状を、もう少し世の中の人達にも知ってもらえたらと思います。
利用者さんからの暴言や暴力に対応するために・・・
今実際に、利用者さんからの暴言や暴力に悩み、苦しんでいる人もいると思います。そんな時、まず自分なら何ができるのか、現場で働く職員の声も聞きながら、考えられることをいくつか挙げてみました。
利用者さんの病状や認知症に対する知識や理解を深める
暴言や暴力をする利用者さんの中には、何か大きな疾患を抱えていたり、認知症と診断されている人も多いのではないでしょうか。
例えば、脳疾患等により何かしらの後遺症がある場合、意思の疎通がうまくいかないことで、つい感情的になってしまう場合があります。
また認知症とひとことで言っても、その症状は一人ひとりによって違いがあることなどをまずは理解しておくことが大切です。
体調不良を疑ってみる
利用者さんによっては自分の体調不良をうまく伝えられないことで、その苛立ちなどから暴言や暴力に繋がる場合もあります。身体的な不調がある時には、認知症状が悪化することがあります。
よく言われるのが脱水や便秘です。水分摂取や排便管理に留意することで、治まる場合もあります。また急性期の病気などが起きている場合も同様で、必要に応じて医療に受診し、治療を行なうことで改善される場合もあります。
暴言や暴力に至る背景を考える
よく現場の中で「何だか理由はわからないけれど、今日は○○さんイライラして暴言を吐いている。」などの声を聞くことがあります。しかし、その行為をする背景には何があるのかを、色々探ってみることも必要です。
例えば ・体調がすぐれない、どこかが痛い、眠い ・自分が嫌なことを無理強いさせられる ・今日は家族が誰も来なくて寂しい ・今はそんなこと したくない ・自分の部屋を勝手に入られた(声かけしても忘れてしまうこともある) など、何かしらの理由があってのことなのかもしれません。
自分の関わり方を振り返る
自分だけが、特定の利用者さんから暴言や暴力を受けている場合には、まずは、自分の関わり方に何か問題はないかを考えてみましょう。
例えば ・その利用者さんと、しっかり信頼関係ができているか ・介助の前には、必ず声かけをしているか ・言葉かけの仕方や表情、声の調子など、威圧的になっていないか ・本人の意向を無視するような業務優先の対応をしていないか ・暴力・暴言を受けている自分と、受けていない他の職員のケアの方法に違いがあるかなど、ひとつずつ確認してみることも必要です。
対応方法を工夫する
これは有料老人ホームで働くSさん(男性)の話です。自分がこの施設に入職したばかりの頃、ある女性利用者さんからオムツ交換の際に「やめてくれ!」「触るな!」と毎回暴言を吐かれ、腕にかみつかれたりするなどの行為がありました。
90歳後半の利用者さんですが、排泄や入浴介助を男性介護士にされるのが嫌で、それが暴言や暴力として現れていることは、施設側もわかっているのですが、この施設は何故か男性介護士が多く、常に同性介助をすることが不可能なため、男性の新人職員が入るたびに毎回大騒ぎになるとのことでした。
その後しばらくの間は、先輩の男性介護士と一緒にその部屋に入り、先輩とその利用者さんとの掛け合い漫才のような会話に自分も少しずつ加わることで、徐々にコミュニケ ーションが図れるようになってきました。
その後ひとりになってからも、まずは会話を楽しむ時間を作り、本人が落ち着いているのを見計らい、声かけをするとスムーズに受け入れてくれるようになりました。Sさん曰く、まずは業務を優先に考えず、話のもっていき方を工夫しながら、利用者さんにも負担なく援助に入る方法を、先輩職員から学んだとのことです。
一人で抱え込まない
責任感が強い方ほど、暴言や暴力を振るわれても「自分のやり方が悪いから」と、つい我慢してしまいがちです。しかしそんな時には、一人で抱え込まず、上司や同僚にしっかり相談し、アドバイス等をもらうことが大切です。
まわりからの客観的な意見やアドバイスを受け、その後の対応や関わり方を見直すことにより、気持ちが楽になるだけでなく問題が改善できた人もいます。それでも状況が変わらないようであれば、その利用者との距離を置いてみるのもひとつの方法です。
まとめ
利用者さんから受ける暴言や暴力は、本当に大変な問題であることには間違いありません。「いつ、どんな時に、また自分が何をしようとした時に、どんな暴言や暴力が現れたのか・・・」などと、細かい分析をしながら、その暴言や暴力のきっかけやその背景を探り出すことも大切です。そのためにはまずはひとりで抱え込まず、職場内で情報を共有し、前向きにその対応方法について検討していくようにしましょう。