介護職として働いていると親の介護の時に役立つの?
仕事の休みなどに実家に顔を出しに行くと、よく近所の人から「あなたが介護の仕事をしているから、親御さんに何かあってもきっと安心ね。」と声をかけられます。
そんな時、介護職として働いている人は、みんな親の介護が必要になった時には、どのようにしているのだろうと考えてみることがあります。
今回は、介護職として働く皆さんの親の介護にまつわる体験談を紹介します。
親の介護が必要になった時、誰もが考える問題
昔は兄弟も多く、家族みんなで親を介護し、自分もまた子どもに介護されるのが当たり前でした。しかし少子化に加え、共働きや核家族化により、子ども世代の介護力にも期待できなくなっています。
たとえ娘や息子が介護職であっても、親の面倒をみるのはとても厳しい現実です。特に子育ての終わっていない若い世代ほど切実な問題です。
介護のために仕事を辞める、一人っ子なのでみな自分で抱え込む、遠距離介護など、何らかの形で自分や自分の家族を犠牲にすることもあるかもしれません。 これは介護職に限ったことではなく、今の時代に誰もが抱える問題でしょう。
体験談紹介
介護職として培ってきたものを親の介護に活かせた
自分は、一人っ子で母を早くに亡くし、独身のため父と2人で長い間生活をしていました。その父が突然に末期癌で余命3カ月との宣告を受けたのは今から3年前の事。すでに治療もできず、本人の希望で自宅での闘病生活が始まったのです。
しばらくは、自分自身が父親の病気を受け入れることができず、不安で押しつぶされそうな日々でした。しかし長年の訪問介護の仕事の中で、自宅で利用者さんの最期を看取るお手伝いをしてきた経験が、自分の力になりました。
その後職場と相談し、介護休暇を取り、訪問診療や訪問看護、また訪問介護等の支援を受けながら、無事に自宅での看取りを終えることができました。
何よりも長年の介護の現場の中で学んだこと・・・ ・仕事を辞めないこと ・自分ひとりで抱え込まないこと ・必要な医療や介護のサービスをしっかり活用すること これができたことで、自分は父親としっかり向き合うことができたと思っています。
認知症の利用者さんの介護を通して学んだことを祖母の介護で活かせなかった
両親が共働きだったため、小さな頃から同居していた祖母に面倒を見てもらっていました。その祖母が認知症になったのは自分が特養の介護士として働き3年目の頃でした。日々その症状が進む祖母に対し、父親がかなり厳しい口調で怒り散らし、それを母親も何も言えない状況が続いていました。
自分自身も特養の中で、認知症状の利用者さんの介護を通し、認知症に対する理解ができていたものの、父に色々と話をしても、受け入れてはもらえませんでした。
結局、その後徘徊等で、近所にも迷惑をかけてしまうことが増えたこと、また祖母と父との間に入り苦労した母が限界状態となり、施設入所となりました。
今も介護職として働いていますが、当時を振り返ると、介護の知識や技術は一般の人よりあったと しても、身内を介護するのは本当に難しいことだと実感しました。
まとめ
介護の現場で、日々利用者さんの支援をしている皆さんの中には、いざ自分の親の介護が必要になった時に「果たして自分は親の介護ができる状況でいられるのか?」と考えている人もいるのではないでしょうか。私自身もそうでした。そんな私の思いを知ってか知らずか、ある利用者さんからこんな言葉をかけてもらったのです。
「あなたが私達利用者に対して、一生懸命援助をしてくれているように、あなたの親御さんにも誰かが必ず援助の手を出してくれるはず・・・世の中こうしてまわっているのよ。」と・・・いつの頃からか私は、介護の現場の中で、また年をとっていく親の姿を見ながら、時々この言葉を思い出しています。
これまで自分自身が介護職として様々経験してきたことが、自分の親の介護に直接役立つのかどうかは別としても、決して無駄になることはないと思っています。